ゆっくりしていきんちゃい
僕はこの海岸が好きだ。
この海岸から見える海には近くに島も無く、あたり一面に空と海が広がってる。
風のない日が特にきれいだ。
まるで、青い空を映す大きな鏡みたいに海が広がってる。
悲しい時や、嫌なことが起きた時は必ずここに来てた。
空と海がずっと続いて、その先に交わって、どこから空で、どこから海なんだろうって考えてたら、何故だか心が落ち着くんだ。
だから僕はこの海岸が好きだ。
今日も海岸の堤防に座り、僕は昨日のパーズが持って帰った切れ端を眺めてた。願いが叶うという夢みたいな話がいまいち信じられなかった。こんなことが本当にこの世界に起きる訳がないと誰もが思うことだろう。
でも、一つだけ気になった。
この途中で切れている文章…
『名前は、ス…。』
僕はまだこの伝説が書かれている事を信じてはいない。
だけど、もしこの人が誰なのか分かればこれが本当かどうか分かるかもしれない。もちろん、やっぱりこの文章がウソでこの人物が存在していないかもしれないけど…。
『ワォーン!!』
汽車の音が響いた。『犬列車』だ。
この汽車は独特で犬の遠吠えに似た音がする。
だからこの国じゃみんなそう呼んでいる。
このぺスカートレアイランドは縦に細長い島で、東の端から西の端までは大体歩いて五時間くらいで行けるけど、北のアトリアーヌ城から南の端の港町、ミルモントまでは到底歩いては行けない。
そこで、北から南まで運搬や人々と家畜の移動のために長く一直線の線路を引いてその上を犬列車が年中無休で走ってる。
僕はこのぺスカートレアイランドのちょうど真ん中、ネイベルという街に住んでる。ちなみに名前の由来は、島のヘソの部分だかららしい。
ネイべルはリムーバーストン歴史書館をはじめ、数多く名立たる学問の機関があり、この国の頭脳とも言われている。
他の街にもネイベルのようにそれぞれ特徴がある。
でも、僕はあまり他の街に行った事がない。
行ってみたいとは思うけど…。
「ん?」
さっきまでは誰もいなかったと思ったんだけど、浜辺に誰か座ってる。 …何かしているみたいだ。
ここに人が来るなんて珍しい。別に人が来て変ではないけど…。
僕は側に行ってみることにした。
そこにいたのは、赤いワンピ-スを着ていて、長い黒髪、そして肌が透き通るように白い女の人だった。
僕が、近づいた途端その女の人が、
「はじめまして。」
と言った。僕は少し驚いた。
「驚かしましたか?ごめんなさいね。私、音には敏感なの。特に人の足音には。だから、誰か近くに来たらすぐ分かるの。」
女の人は、僕を一度も見ないで、まるで独り言のように話しかけてきた。でも、どこか話しやすそうな雰囲気がした。
「ねぇ、ここは素敵な場所ね。なんだか落ち着くの。あなたはよく来るの?」
「うん、僕は毎日来てるよ。」
「そうなんだ。あなたのお気に入りの場所なの?」
「そうだよ。だってここから見える景色はきれいでしょ?」
「ごめんなさい。実は私、目が見えないの。でも、なんとなく音で想像できるよ。波の音も風の音も優しい感じがするもの。」
僕はなんで一度も見ないで話をしているのか、ようやく分かった。
僕は、女の人の隣に座った。
「音だけでわかるの?」
「生まれた時から音と感触だけの世界で生きてるから、本当は海も、空も見たことわないの。でも、音と感触だけを頼りに生きてると、形にとらわれない想像ができるし、大切なことが伝わってくるの。」
「大切なこと?」
「そう。見た目や好き嫌いでもなく、この世の中の当たり前じゃなくて、もっと大切な心の世界。」
「心の世界…。」
「あなたにだってあるわ。あなたの声はどこかいつも寂しそうで自分にないものを探してる。でもとてもあなたの声は透き通ってきれいなの。」
僕は生まれて初めて言われた言葉に反応ができなかった。
「気に障ることいった?本当にごめんなさい。」
「いや、違うんだ。いつもこの声のせいで街の連中にバカにされてたんだ。だから初めて言われたから嬉しくて。」
僕は胸の奥が熱くなって何故だか涙が溢れていた。
「あなたにしかないもの。時にはいろんな人がいるから傷つけられる時もある。でも、確かに私みたいにあなたの声を好きになる人もいるわ。」
「ありがとう。」
僕はこの言葉を伝えるのに精一杯だった。
女の人は初めて僕の顔を見た。
そして、優しく笑ってくれた。
「そういえば、自己紹介をしてなったね。
私の名前は、スパールコール。」
「僕は、ロリス。」
「じゃあ、ロリス、私たちはもう友達ね。」
「うん、スパールコール。」
「そろそろ私は帰るね。家族が心配するから。」
「じゃあ、僕送るよ。」
「ありがとう。じゃぁ駅までお願いね。」
僕は彼女の手を引き、駅まで連れってった。
駅に着くと彼女の家族が迎えに来ていた。
「じゃあ、またね。ロリス。」
「うん、またね。」
僕らは手を振りそこで別れた。
僕は家に帰る途中、ずっとスパールコールの事を思い出していた。
生まれて初めて人に言われた言葉、そして空と海より広く、青く澄んだスパールコールの瞳の輝きを。
この海岸から見える海には近くに島も無く、あたり一面に空と海が広がってる。
風のない日が特にきれいだ。
まるで、青い空を映す大きな鏡みたいに海が広がってる。
悲しい時や、嫌なことが起きた時は必ずここに来てた。
空と海がずっと続いて、その先に交わって、どこから空で、どこから海なんだろうって考えてたら、何故だか心が落ち着くんだ。
だから僕はこの海岸が好きだ。
今日も海岸の堤防に座り、僕は昨日のパーズが持って帰った切れ端を眺めてた。願いが叶うという夢みたいな話がいまいち信じられなかった。こんなことが本当にこの世界に起きる訳がないと誰もが思うことだろう。
でも、一つだけ気になった。
この途中で切れている文章…
『名前は、ス…。』
僕はまだこの伝説が書かれている事を信じてはいない。
だけど、もしこの人が誰なのか分かればこれが本当かどうか分かるかもしれない。もちろん、やっぱりこの文章がウソでこの人物が存在していないかもしれないけど…。
『ワォーン!!』
汽車の音が響いた。『犬列車』だ。
この汽車は独特で犬の遠吠えに似た音がする。
だからこの国じゃみんなそう呼んでいる。
このぺスカートレアイランドは縦に細長い島で、東の端から西の端までは大体歩いて五時間くらいで行けるけど、北のアトリアーヌ城から南の端の港町、ミルモントまでは到底歩いては行けない。
そこで、北から南まで運搬や人々と家畜の移動のために長く一直線の線路を引いてその上を犬列車が年中無休で走ってる。
僕はこのぺスカートレアイランドのちょうど真ん中、ネイベルという街に住んでる。ちなみに名前の由来は、島のヘソの部分だかららしい。
ネイべルはリムーバーストン歴史書館をはじめ、数多く名立たる学問の機関があり、この国の頭脳とも言われている。
他の街にもネイベルのようにそれぞれ特徴がある。
でも、僕はあまり他の街に行った事がない。
行ってみたいとは思うけど…。
「ん?」
さっきまでは誰もいなかったと思ったんだけど、浜辺に誰か座ってる。 …何かしているみたいだ。
ここに人が来るなんて珍しい。別に人が来て変ではないけど…。
僕は側に行ってみることにした。
そこにいたのは、赤いワンピ-スを着ていて、長い黒髪、そして肌が透き通るように白い女の人だった。
僕が、近づいた途端その女の人が、
「はじめまして。」
と言った。僕は少し驚いた。
「驚かしましたか?ごめんなさいね。私、音には敏感なの。特に人の足音には。だから、誰か近くに来たらすぐ分かるの。」
女の人は、僕を一度も見ないで、まるで独り言のように話しかけてきた。でも、どこか話しやすそうな雰囲気がした。
「ねぇ、ここは素敵な場所ね。なんだか落ち着くの。あなたはよく来るの?」
「うん、僕は毎日来てるよ。」
「そうなんだ。あなたのお気に入りの場所なの?」
「そうだよ。だってここから見える景色はきれいでしょ?」
「ごめんなさい。実は私、目が見えないの。でも、なんとなく音で想像できるよ。波の音も風の音も優しい感じがするもの。」
僕はなんで一度も見ないで話をしているのか、ようやく分かった。
僕は、女の人の隣に座った。
「音だけでわかるの?」
「生まれた時から音と感触だけの世界で生きてるから、本当は海も、空も見たことわないの。でも、音と感触だけを頼りに生きてると、形にとらわれない想像ができるし、大切なことが伝わってくるの。」
「大切なこと?」
「そう。見た目や好き嫌いでもなく、この世の中の当たり前じゃなくて、もっと大切な心の世界。」
「心の世界…。」
「あなたにだってあるわ。あなたの声はどこかいつも寂しそうで自分にないものを探してる。でもとてもあなたの声は透き通ってきれいなの。」
僕は生まれて初めて言われた言葉に反応ができなかった。
「気に障ることいった?本当にごめんなさい。」
「いや、違うんだ。いつもこの声のせいで街の連中にバカにされてたんだ。だから初めて言われたから嬉しくて。」
僕は胸の奥が熱くなって何故だか涙が溢れていた。
「あなたにしかないもの。時にはいろんな人がいるから傷つけられる時もある。でも、確かに私みたいにあなたの声を好きになる人もいるわ。」
「ありがとう。」
僕はこの言葉を伝えるのに精一杯だった。
女の人は初めて僕の顔を見た。
そして、優しく笑ってくれた。
「そういえば、自己紹介をしてなったね。
私の名前は、スパールコール。」
「僕は、ロリス。」
「じゃあ、ロリス、私たちはもう友達ね。」
「うん、スパールコール。」
「そろそろ私は帰るね。家族が心配するから。」
「じゃあ、僕送るよ。」
「ありがとう。じゃぁ駅までお願いね。」
僕は彼女の手を引き、駅まで連れってった。
駅に着くと彼女の家族が迎えに来ていた。
「じゃあ、またね。ロリス。」
「うん、またね。」
僕らは手を振りそこで別れた。
僕は家に帰る途中、ずっとスパールコールの事を思い出していた。
生まれて初めて人に言われた言葉、そして空と海より広く、青く澄んだスパールコールの瞳の輝きを。
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