ゆっくりしていきんちゃい
父さん聞こえていますか?
父さんが最後まで研究していたこの国の歴史を
僕も知りたくなったんだ。
父さんの親友、ビルズ・パンキソン学士。
ガウラロ学長。
この二人に僕は歴史を学びました。
そして、二人が教えてくれなかった部分は
父さんが残してくれた研究に使った資料で学んだよ。
僕は正直本当に驚いたよ。
だってあの日、パーズが持って帰ったページの切れ端…
あの伝説が本当にあったなんて…。
だけどこの資料だけじゃまだ分からない部分がたくさんある。
あの二人がこの伝説について何にも教えてくれなかったという事は
きっと誰も教えてはくれないだろう。
だから今度は、僕が一人で調べようと思う。
あの切れ端に書いてあった、途中で切れた名前の人に会えば
きっと全てが分かるはず。
根拠はないけど何故だかそんな気がしてならないんだ。
ねぇ…。
父さんが何故この研究をしていたか少しだけど分かってきたよ。
僕も賛成だ。
だから、僕も語り継ごうと思うんだ。
いいでしょ?父さん…。
まだ未完成だけど、僕が学んだこの歴史をとりあえず何かに書いておこうと思い、書くにはいいものがないかと部屋中を探した。
しばらく探していると、ずっと前にガウラロ学長から、
『毎日を書いて自分の歴史を残しなさい』ともらった青色の日記帳を見つけた。
いつも海岸でボーッとしている自分に、毎日を書くほど変わった事は起きないと納めた物だった。
僕はこの日記帳に書いていこうと思った。
明日は、カーニバル。きっと朝にはパーズが迎えに来るだろう。
徹夜になるな…。
僕は机に向かい小さな灯りの中書き始めた…。
『この国の歴史』
今から二百年前の、1620年。
世界は大航海時代を経て、未知なる大陸に進出し、自国の縄張りを広めようとしていた時代。
この小さな島国にも異国の地から来た一隻の探索船がやって来た。
しかし、長く険しい航海の経て来たその船の中は、
高熱が出る伝染病に罹り、大半の船員は死んでいた。
この国の人々は、まだ生きている船員を救出し、手厚く保護した。
それから三ヶ月後…
-1621年- アトリアーヌ城内
「だいぶよくなったみたいだな。」
「はい、ありがとうございます。もしあのままでいたら船は全滅していたでしょう。ウエニス国王はもとより、この国の人々には感謝をしても仕切れません。どうか我々にこのご恩をお返しさせてください。」
「何を言っている。我々は人として当たり前の事をしただけ。それより、まだ病み上がり、ここにいてしばらく体と心を癒しなさい。仲間を失った悲しみが消えはしないだろうから。」
「…ありがとうござい…ます…。」
「その涙忘れないように…。」
彼の名は ネイル・クライスト
新たな発見をするため各分野の技術者、科学者を乗せた探索船の船長。
遠いイグーランドの国からやってきた。
「異国の地からやってきた、よそ者の我々に温かく接してくれるこの国の人たちに、何か我々にできる事をしよう。」
ネイルがそう船員達に言うと、船員達はみんな賛成してくれた。
「ネイルさん!なら私達の技術や知識をこの国のために使うというのはどうでしょう?」
「おぉ、それはいい。少しでもこの国の人々が喜んでもらえるのなら!」
彼らは率先してこの国のために自らの知識、技術を伝ながら国民と一緒になってこの国を発展させていった。
「ネイル。皆に集まってもらったぞ。」
「ありがとうございます。ウエニス国王。」
「いや、こちらこそこの国のために働いてもらいすまないな。おかげで国民の暮らしは良くなる一方だ。」
「そう言って頂けると我々も救われます。」
「しかし、今日はどうしたのだ?皆に何か伝える事があるのか?」
「はい。我々は培った技術や知識を皆様に伝えてきました。しかし、
まだ伝えてないものがあります。」
「これだけこの国を良くしているのに他にもまだあるのか。」
「…。これは良くなるかどうか私にも分かりません。」
「…。何なんだそれは。」
「それは…。今の世界のことです。」
「それは私達も知りたがった事。この国以外のことはまだ誰も知らない。それを知る事はいけないことなのか?」
「それは、違います。我々も同じ様に考え、この大海原に飛び出していきました。しかし、この国を見ていると世界を知らない方がいいのではないのかと思いました。」
「…それは一体何故だ?」
「私もこの国の事を少しずつ色んな事を学んでいきました。その中でも、この国の歴史は世界に類を見ないでしょう。」
「この国の中で生きてきた私にはよく分からんが、この国は世界の国から見ればおかしいと言うことなのか?」
「それも違います。…きっと世界がおかしいのでしょう。」
「世界がおかしい?」
「…はい。この国の4000年の長く尊い歴史の中で、一度も戦争が起きなかった事。それは、とても大切で、もっとも人間が純粋に生きているという事。しかし、世界はそうではありません。」
「人々が争っているというのか?」
「この国ではありえない事なのだろうと思います。しかし、皆様に伝えたいことは、今、国王がおっしゃったように、世界は今まで血を血で洗う醜い争いを繰り返してきたという事。
歴史の大部分は戦争で、時にはその時代の権力者の欲ために、時には自らの信ずる神のために、時には苦しい生活を強いられた国民が自由を奪い返すために。その都度、無益な人々が何十万人と死んで行きました。
そして、今世界は未知なる大陸を我が物にしようと争っています。」
「なんと言うことだ。では、このぺスカートレアイランドも他の国の争いに巻き込まれてしまうのか?」
「…。おそらくは。」
「ネイル。どうすればいいのだ。私は命に変えても、この国の人々とあの遺跡だけは守らねばならん。しかし、この国には戦う力などない…。」
「国王、敵が襲来してくれば和解することは皆無に近いでしょう。おそらくこの土地をを奪おうとしてくる国は、今世界で権力を誇示し、侵略を重ねている国……我が母国、イグーランド。」
「ネイル…、そなたは…。」
「信じてください!!我々はそんなことをするために来たのではありません。我々もこの国を守りたいと思っています。信じてください!!」
「そうか、お前を信じよう。それに今ではそなたはこの国の恩人だからな。」
「この国に我々は残り、来るであろう敵の襲来に備えなければならない
と思っています。」
「しかし、そなた達の家族はどうするのか?今でも国で帰ってくることを望んでいるだろう。」
「我々の家族は皆戦争で死んでしまいました。だから、何も失うものがない我々がこの命がけの旅に出れたのです。」
「そうだったたのか。本当にすまない。わが国にはそなた達の力なしではもうどうにもできん。どうか…共に…。」
「ウエニス国王、あなたのご意志のままに…。」
ネイルは国王に誓いをたてた。共にこの国を守るために。
この瞬間を、『シリウスの誓い』と呼んだ。
「国王、しかし我々の力だけでは限りがあります。おそらく向こうの国では、さらに近代化が進み最新の兵器が次々と生み出されているでしょう。」
「では、どうればよいのか?」
「はい、この国には近代化さえ進んでいなかったものの、資源は豊富にあり、我々も何度も驚いたのですが、何よりもすごいのは、人々の能力の高さです。たった三年という時間でこの国の人々は我々と同じくらいの技術、知識を身につけています。そして今では、我々さえ考え出せなかった発明や、新たな発見をしています。その中で蒸気を使ってエネルギーを生み出す研究がされています。これが成功したら世界も驚愕する物だと思います。これを使い我々も戦うための武器を持ちましょう。
そして、この地では戦争はなかったものの乗馬術、そして剣術が古来から一つの芸術として広まっています。我々も少しは自身があったのですが、ここまで身体能力も卓越しているのを見たことがありません。
本当にこの国には驚かされっぱなしです。まるでこの国は、「神の子が住む島」そう思えて…いや、そう思わずしていられません。」
「では、この国を守れるのだな?」
「今は、はっきりとは言えません。しかし、今回の蒸気の発明ができ、戦術を練れば、こちらの兵の人数で負けていても、この国は戦えるでしょう。そして、何よりも諦めない力が我々にはあるのですから。」
それから、ぺスカートレアイランドの人々は見たこともない戦争に備え、武器を作り、徴兵には子供から大人まで皆が自ら志願し訓練を受け、蒸気の発明は急ピッチで行われた。
この戦争がもたらすものが一体なんなのか。
この時まだ、ネイルにも想像ができなかった。
父さんが最後まで研究していたこの国の歴史を
僕も知りたくなったんだ。
父さんの親友、ビルズ・パンキソン学士。
ガウラロ学長。
この二人に僕は歴史を学びました。
そして、二人が教えてくれなかった部分は
父さんが残してくれた研究に使った資料で学んだよ。
僕は正直本当に驚いたよ。
だってあの日、パーズが持って帰ったページの切れ端…
あの伝説が本当にあったなんて…。
だけどこの資料だけじゃまだ分からない部分がたくさんある。
あの二人がこの伝説について何にも教えてくれなかったという事は
きっと誰も教えてはくれないだろう。
だから今度は、僕が一人で調べようと思う。
あの切れ端に書いてあった、途中で切れた名前の人に会えば
きっと全てが分かるはず。
根拠はないけど何故だかそんな気がしてならないんだ。
ねぇ…。
父さんが何故この研究をしていたか少しだけど分かってきたよ。
僕も賛成だ。
だから、僕も語り継ごうと思うんだ。
いいでしょ?父さん…。
まだ未完成だけど、僕が学んだこの歴史をとりあえず何かに書いておこうと思い、書くにはいいものがないかと部屋中を探した。
しばらく探していると、ずっと前にガウラロ学長から、
『毎日を書いて自分の歴史を残しなさい』ともらった青色の日記帳を見つけた。
いつも海岸でボーッとしている自分に、毎日を書くほど変わった事は起きないと納めた物だった。
僕はこの日記帳に書いていこうと思った。
明日は、カーニバル。きっと朝にはパーズが迎えに来るだろう。
徹夜になるな…。
僕は机に向かい小さな灯りの中書き始めた…。
『この国の歴史』
今から二百年前の、1620年。
世界は大航海時代を経て、未知なる大陸に進出し、自国の縄張りを広めようとしていた時代。
この小さな島国にも異国の地から来た一隻の探索船がやって来た。
しかし、長く険しい航海の経て来たその船の中は、
高熱が出る伝染病に罹り、大半の船員は死んでいた。
この国の人々は、まだ生きている船員を救出し、手厚く保護した。
それから三ヶ月後…
-1621年- アトリアーヌ城内
「だいぶよくなったみたいだな。」
「はい、ありがとうございます。もしあのままでいたら船は全滅していたでしょう。ウエニス国王はもとより、この国の人々には感謝をしても仕切れません。どうか我々にこのご恩をお返しさせてください。」
「何を言っている。我々は人として当たり前の事をしただけ。それより、まだ病み上がり、ここにいてしばらく体と心を癒しなさい。仲間を失った悲しみが消えはしないだろうから。」
「…ありがとうござい…ます…。」
「その涙忘れないように…。」
彼の名は ネイル・クライスト
新たな発見をするため各分野の技術者、科学者を乗せた探索船の船長。
遠いイグーランドの国からやってきた。
「異国の地からやってきた、よそ者の我々に温かく接してくれるこの国の人たちに、何か我々にできる事をしよう。」
ネイルがそう船員達に言うと、船員達はみんな賛成してくれた。
「ネイルさん!なら私達の技術や知識をこの国のために使うというのはどうでしょう?」
「おぉ、それはいい。少しでもこの国の人々が喜んでもらえるのなら!」
彼らは率先してこの国のために自らの知識、技術を伝ながら国民と一緒になってこの国を発展させていった。
「ネイル。皆に集まってもらったぞ。」
「ありがとうございます。ウエニス国王。」
「いや、こちらこそこの国のために働いてもらいすまないな。おかげで国民の暮らしは良くなる一方だ。」
「そう言って頂けると我々も救われます。」
「しかし、今日はどうしたのだ?皆に何か伝える事があるのか?」
「はい。我々は培った技術や知識を皆様に伝えてきました。しかし、
まだ伝えてないものがあります。」
「これだけこの国を良くしているのに他にもまだあるのか。」
「…。これは良くなるかどうか私にも分かりません。」
「…。何なんだそれは。」
「それは…。今の世界のことです。」
「それは私達も知りたがった事。この国以外のことはまだ誰も知らない。それを知る事はいけないことなのか?」
「それは、違います。我々も同じ様に考え、この大海原に飛び出していきました。しかし、この国を見ていると世界を知らない方がいいのではないのかと思いました。」
「…それは一体何故だ?」
「私もこの国の事を少しずつ色んな事を学んでいきました。その中でも、この国の歴史は世界に類を見ないでしょう。」
「この国の中で生きてきた私にはよく分からんが、この国は世界の国から見ればおかしいと言うことなのか?」
「それも違います。…きっと世界がおかしいのでしょう。」
「世界がおかしい?」
「…はい。この国の4000年の長く尊い歴史の中で、一度も戦争が起きなかった事。それは、とても大切で、もっとも人間が純粋に生きているという事。しかし、世界はそうではありません。」
「人々が争っているというのか?」
「この国ではありえない事なのだろうと思います。しかし、皆様に伝えたいことは、今、国王がおっしゃったように、世界は今まで血を血で洗う醜い争いを繰り返してきたという事。
歴史の大部分は戦争で、時にはその時代の権力者の欲ために、時には自らの信ずる神のために、時には苦しい生活を強いられた国民が自由を奪い返すために。その都度、無益な人々が何十万人と死んで行きました。
そして、今世界は未知なる大陸を我が物にしようと争っています。」
「なんと言うことだ。では、このぺスカートレアイランドも他の国の争いに巻き込まれてしまうのか?」
「…。おそらくは。」
「ネイル。どうすればいいのだ。私は命に変えても、この国の人々とあの遺跡だけは守らねばならん。しかし、この国には戦う力などない…。」
「国王、敵が襲来してくれば和解することは皆無に近いでしょう。おそらくこの土地をを奪おうとしてくる国は、今世界で権力を誇示し、侵略を重ねている国……我が母国、イグーランド。」
「ネイル…、そなたは…。」
「信じてください!!我々はそんなことをするために来たのではありません。我々もこの国を守りたいと思っています。信じてください!!」
「そうか、お前を信じよう。それに今ではそなたはこの国の恩人だからな。」
「この国に我々は残り、来るであろう敵の襲来に備えなければならない
と思っています。」
「しかし、そなた達の家族はどうするのか?今でも国で帰ってくることを望んでいるだろう。」
「我々の家族は皆戦争で死んでしまいました。だから、何も失うものがない我々がこの命がけの旅に出れたのです。」
「そうだったたのか。本当にすまない。わが国にはそなた達の力なしではもうどうにもできん。どうか…共に…。」
「ウエニス国王、あなたのご意志のままに…。」
ネイルは国王に誓いをたてた。共にこの国を守るために。
この瞬間を、『シリウスの誓い』と呼んだ。
「国王、しかし我々の力だけでは限りがあります。おそらく向こうの国では、さらに近代化が進み最新の兵器が次々と生み出されているでしょう。」
「では、どうればよいのか?」
「はい、この国には近代化さえ進んでいなかったものの、資源は豊富にあり、我々も何度も驚いたのですが、何よりもすごいのは、人々の能力の高さです。たった三年という時間でこの国の人々は我々と同じくらいの技術、知識を身につけています。そして今では、我々さえ考え出せなかった発明や、新たな発見をしています。その中で蒸気を使ってエネルギーを生み出す研究がされています。これが成功したら世界も驚愕する物だと思います。これを使い我々も戦うための武器を持ちましょう。
そして、この地では戦争はなかったものの乗馬術、そして剣術が古来から一つの芸術として広まっています。我々も少しは自身があったのですが、ここまで身体能力も卓越しているのを見たことがありません。
本当にこの国には驚かされっぱなしです。まるでこの国は、「神の子が住む島」そう思えて…いや、そう思わずしていられません。」
「では、この国を守れるのだな?」
「今は、はっきりとは言えません。しかし、今回の蒸気の発明ができ、戦術を練れば、こちらの兵の人数で負けていても、この国は戦えるでしょう。そして、何よりも諦めない力が我々にはあるのですから。」
それから、ぺスカートレアイランドの人々は見たこともない戦争に備え、武器を作り、徴兵には子供から大人まで皆が自ら志願し訓練を受け、蒸気の発明は急ピッチで行われた。
この戦争がもたらすものが一体なんなのか。
この時まだ、ネイルにも想像ができなかった。
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だんだんと街はたくさんの人で賑わい、移動するのも難しくなってきた。僕は、カーニバルが行われているメインストリートを一通り歩いて周った。その中にはスパールコールはいなかった。それでもと思い、僕はまた小さな期待の中探しに周った。
「ワォーン!!ワォーン!!」
犬列車がやって来た。今日は一段と犬の遠吠えを鳴らしていた。
「こんなとこにいたのかよ。」
「あっパーズ。もう終わったの?」
「あっパーズ。もう終わったの?じゃねぇよ!!オレ海岸でずっと待ってたんだぜ?あれからどれ位経ってると思ってるんだよ。とっくに昼の時間は過ぎて、もう腹減ったよ。」
もうそんなに時間が経ってたんだ…。
「ごめん。じゃあなんか買って食べようか。」
「しかたない、お前のおごりで手を打とうじゃないか。」
「はいはい、分かりました。ところで大会はどうなったの?」
「あっさり負けたよ。入賞もできなかった…。やつらは凄いよ。」
…そんなに技術を争う大会だったんだ。
僕らは露店でクリームコッペパンを買い、食べながらビネス広場に行った。
ビネス広場で行われる喜劇はかなり人気があって、このカーニバルのメインの一つだ。いつもは難しい研究ばかりしている学者達がピエロになったり女装をしたりしてかなりマヌケな事をする。それが面白くてビネス広場いっぱいに人が集まる。今回はパーズの父さんも出るらしく、僕らは観に行く事になっていた。
僕らはビネス広場の大階段を上りながらくだらない話をして盛り上がってた。その時、階段を上る人ごみの中にスパールコールを見つけた。
「ん?どうしたんだ?ロリス。」
「スパールコールだ。」
「あぁ、あのお嬢様か。知ってるのか?」
「ちょっとね。パーズ知ってるの?」
「ちょっと前に家族で美術館に行ってよ、そしたらあの人の絵があってさ。なんでも目が見えないのに、絵が描ける天才で、隣町のスターゲートの、ウィンゲル家の一人娘だそうだ。オレは、絵とかに興味ないけど、あの絵はなんだか不思議だったかな。」
「不思議?」
「あぁ、あの人の絵の一つにリンゴの絵があったんだけど、俺達が知ってるリンゴの形じゃなくて…、それにリンゴの色も赤い色で描かずに何て言うのかな、虹色じゃなくて、でも色んな色が混ざってて…。」
「パーズはその絵を見てなんて思ったの!?」
「なっなんだよ。いきなり声をでかくして。まぁ観た時は、変だとか思わなっかたな。なんだかそのリンゴは、とてもおいしそうだった気がする。」
「おいしそう?それパーズがお腹減ってただけなんじゃない?」
「何だよ!お前が聞くから教えてやったのに!!それにお前変だぞ、ムキになって…。お前まさか…。」
「あッ!!早く行かないと始まりそうだ!」
パーズの言葉を振り切るように僕は走り出してた。
何なんだろう…僕。
広場に用意された客席はもうたくさんの人が座っていて、しばらく探して、やっと空いている席に僕らは座った。
僕はすぐにスパールコールがどこにいるのか探した。
僕らがいる所から反対側の西の席に座っていた。
スパールコールは家族の人と来てるみたいだ。
なんだか楽しそうだ…。
「ロリス君、君は喜劇を観に来たのかい?それとも彼女を観に来たのかい?」
パーズの変な口調で言った言葉で背筋がピンとした。
「あっあぁ…始まるみたいだよ!」
パーズの冷ややかな視線が刺さる…。もう、どうしたんだろ…僕。
僕が風邪をひいていないのに体が熱くなってる最中、喜劇は始まった。
今回、パーズの父さんは女装して出てきた。それを観て僕もパーズも、大笑いしていた。
喜劇は終始観客席から笑いが絶えず、大盛り上がりだった。
スパールコールも笑っていた。
僕は、あの時、ふと思った。今彼女にこの喜劇が見えているんだろうか?
彼女が目が見えないことを知っていたはずなのに、彼女が楽しそうに笑う姿を見て、僕はそう思わずにいられなかった。
喜劇が終わり、辺りは暗くなってきた。僕らは海岸へと向かった。
その途中にパーズの妹、リリーと合流した。
「もうお兄ちゃん、そんなもの拾わないでよ。」
「いちいちうるさいな。ほっといてくれよ。」
千切れた国旗を拾ったパーズにリリーはあきれた口調で言った。
パーズとリリーは一歳違いで、何かとすぐにケンカをしている。
リリーはパーズの妹なのにとても可愛い。鼻は高く、目は大きく二重。
僕はリリーに告白して見事にフラれた男の子を何人も知ってる。
逆にパーズが告白をしてパーズをフッた女の子も何人も知ってる。
だけど、凄く似ているところがある。
二人とも興味があるものは、何が何でも知りたいし欲しい。
そして絶対に諦めない。
「ロリス、また家に来なよ。私、ロリスのためにマフラー編んだの。」
「おい、リリーまだ夏だぞ。今マフラー作ってどうすんだよ。」
「うるさいな、今年の冬になって渡してもその前に寒かったらどうすんのよ!ロリスが風邪引いたら嫌だもん。だから早めに渡すの。」
「ありがとう。じゃあ今度行くね。」
「ロリス、嫌なら嫌といいなさい。手遅れになる前に。」
「だからうるさいの!!お兄ちゃんあっちに行って!!私達の邪魔をしないで。」
「私達っていつそんな感じになったんだよ。それにもう無理だぜぇ。今ロリスには好きな人がいるんだからな。」
「ええ!!ウソよ!!ねっ!ロリス。」
リリーが泣きそうな顔して腕を掴み僕を見てる。
「そんな訳ないよ。それに一回しか話した事ないし。」
僕はそう言った。
僕はスパールコールを好きなのかな…。
よく分からないや。
海岸について一番高い堤防に座り僕らは花火が打ち上げられるのを待った。
空にはたくさんの星が暗い夜に輝いて、月の明かりがまっすぐ僕らに光の道を作ってた。
このまま僕は、この道を渡って父さんに会いに行けるような気がした。
「キレイだね…」
リリーが言った。僕も本当にそう思う。
スパールコールにはどんな風に見えるんだろう。
もしかしたらあなたは僕達とは違う世界に生きてるの?
それとも僕達が本当の世界を知らないだけなんだろうか。
「ヒューン、ドンッパーン、キラキラキラ…。」
「わぁ花火上がった!!キレイ!!」
「ヒュー!!でっけぇ!!」
星の形をした花火が空に浮かんだ。
この花火が打ち上げれる数は、二百年前、この国を守った王様が死んだ歳にちなんで、平和の願いを込めて28発打ち上げられている。
この僕の話を見ている人たちには
この国の歴史はいつか語ることになるだろう。
これからぼくが見る世界は過去から現在そして未来へ繋がり、ようやく
姿を現してくるものだから。
そして、これから起きることは決して忘れないでほしい。
そして、あなたの子供にもいつかこの話をしてあげてほしい。
でも、もし、あなたが生きる意味をもう知ってるなら話す事をやめてほしい。
なぜなら、あなたはもう本当の世界を生きてるんだから。
僕らは花火が終わってもしばらくそこにいた。
そして、帰ろうってパーズが言って、僕らは家に帰った。
明日また、海岸にスパールコールがいることを願いながら僕は眠りに就いた。
「ワォーン!!ワォーン!!」
犬列車がやって来た。今日は一段と犬の遠吠えを鳴らしていた。
「こんなとこにいたのかよ。」
「あっパーズ。もう終わったの?」
「あっパーズ。もう終わったの?じゃねぇよ!!オレ海岸でずっと待ってたんだぜ?あれからどれ位経ってると思ってるんだよ。とっくに昼の時間は過ぎて、もう腹減ったよ。」
もうそんなに時間が経ってたんだ…。
「ごめん。じゃあなんか買って食べようか。」
「しかたない、お前のおごりで手を打とうじゃないか。」
「はいはい、分かりました。ところで大会はどうなったの?」
「あっさり負けたよ。入賞もできなかった…。やつらは凄いよ。」
…そんなに技術を争う大会だったんだ。
僕らは露店でクリームコッペパンを買い、食べながらビネス広場に行った。
ビネス広場で行われる喜劇はかなり人気があって、このカーニバルのメインの一つだ。いつもは難しい研究ばかりしている学者達がピエロになったり女装をしたりしてかなりマヌケな事をする。それが面白くてビネス広場いっぱいに人が集まる。今回はパーズの父さんも出るらしく、僕らは観に行く事になっていた。
僕らはビネス広場の大階段を上りながらくだらない話をして盛り上がってた。その時、階段を上る人ごみの中にスパールコールを見つけた。
「ん?どうしたんだ?ロリス。」
「スパールコールだ。」
「あぁ、あのお嬢様か。知ってるのか?」
「ちょっとね。パーズ知ってるの?」
「ちょっと前に家族で美術館に行ってよ、そしたらあの人の絵があってさ。なんでも目が見えないのに、絵が描ける天才で、隣町のスターゲートの、ウィンゲル家の一人娘だそうだ。オレは、絵とかに興味ないけど、あの絵はなんだか不思議だったかな。」
「不思議?」
「あぁ、あの人の絵の一つにリンゴの絵があったんだけど、俺達が知ってるリンゴの形じゃなくて…、それにリンゴの色も赤い色で描かずに何て言うのかな、虹色じゃなくて、でも色んな色が混ざってて…。」
「パーズはその絵を見てなんて思ったの!?」
「なっなんだよ。いきなり声をでかくして。まぁ観た時は、変だとか思わなっかたな。なんだかそのリンゴは、とてもおいしそうだった気がする。」
「おいしそう?それパーズがお腹減ってただけなんじゃない?」
「何だよ!お前が聞くから教えてやったのに!!それにお前変だぞ、ムキになって…。お前まさか…。」
「あッ!!早く行かないと始まりそうだ!」
パーズの言葉を振り切るように僕は走り出してた。
何なんだろう…僕。
広場に用意された客席はもうたくさんの人が座っていて、しばらく探して、やっと空いている席に僕らは座った。
僕はすぐにスパールコールがどこにいるのか探した。
僕らがいる所から反対側の西の席に座っていた。
スパールコールは家族の人と来てるみたいだ。
なんだか楽しそうだ…。
「ロリス君、君は喜劇を観に来たのかい?それとも彼女を観に来たのかい?」
パーズの変な口調で言った言葉で背筋がピンとした。
「あっあぁ…始まるみたいだよ!」
パーズの冷ややかな視線が刺さる…。もう、どうしたんだろ…僕。
僕が風邪をひいていないのに体が熱くなってる最中、喜劇は始まった。
今回、パーズの父さんは女装して出てきた。それを観て僕もパーズも、大笑いしていた。
喜劇は終始観客席から笑いが絶えず、大盛り上がりだった。
スパールコールも笑っていた。
僕は、あの時、ふと思った。今彼女にこの喜劇が見えているんだろうか?
彼女が目が見えないことを知っていたはずなのに、彼女が楽しそうに笑う姿を見て、僕はそう思わずにいられなかった。
喜劇が終わり、辺りは暗くなってきた。僕らは海岸へと向かった。
その途中にパーズの妹、リリーと合流した。
「もうお兄ちゃん、そんなもの拾わないでよ。」
「いちいちうるさいな。ほっといてくれよ。」
千切れた国旗を拾ったパーズにリリーはあきれた口調で言った。
パーズとリリーは一歳違いで、何かとすぐにケンカをしている。
リリーはパーズの妹なのにとても可愛い。鼻は高く、目は大きく二重。
僕はリリーに告白して見事にフラれた男の子を何人も知ってる。
逆にパーズが告白をしてパーズをフッた女の子も何人も知ってる。
だけど、凄く似ているところがある。
二人とも興味があるものは、何が何でも知りたいし欲しい。
そして絶対に諦めない。
「ロリス、また家に来なよ。私、ロリスのためにマフラー編んだの。」
「おい、リリーまだ夏だぞ。今マフラー作ってどうすんだよ。」
「うるさいな、今年の冬になって渡してもその前に寒かったらどうすんのよ!ロリスが風邪引いたら嫌だもん。だから早めに渡すの。」
「ありがとう。じゃあ今度行くね。」
「ロリス、嫌なら嫌といいなさい。手遅れになる前に。」
「だからうるさいの!!お兄ちゃんあっちに行って!!私達の邪魔をしないで。」
「私達っていつそんな感じになったんだよ。それにもう無理だぜぇ。今ロリスには好きな人がいるんだからな。」
「ええ!!ウソよ!!ねっ!ロリス。」
リリーが泣きそうな顔して腕を掴み僕を見てる。
「そんな訳ないよ。それに一回しか話した事ないし。」
僕はそう言った。
僕はスパールコールを好きなのかな…。
よく分からないや。
海岸について一番高い堤防に座り僕らは花火が打ち上げられるのを待った。
空にはたくさんの星が暗い夜に輝いて、月の明かりがまっすぐ僕らに光の道を作ってた。
このまま僕は、この道を渡って父さんに会いに行けるような気がした。
「キレイだね…」
リリーが言った。僕も本当にそう思う。
スパールコールにはどんな風に見えるんだろう。
もしかしたらあなたは僕達とは違う世界に生きてるの?
それとも僕達が本当の世界を知らないだけなんだろうか。
「ヒューン、ドンッパーン、キラキラキラ…。」
「わぁ花火上がった!!キレイ!!」
「ヒュー!!でっけぇ!!」
星の形をした花火が空に浮かんだ。
この花火が打ち上げれる数は、二百年前、この国を守った王様が死んだ歳にちなんで、平和の願いを込めて28発打ち上げられている。
この僕の話を見ている人たちには
この国の歴史はいつか語ることになるだろう。
これからぼくが見る世界は過去から現在そして未来へ繋がり、ようやく
姿を現してくるものだから。
そして、これから起きることは決して忘れないでほしい。
そして、あなたの子供にもいつかこの話をしてあげてほしい。
でも、もし、あなたが生きる意味をもう知ってるなら話す事をやめてほしい。
なぜなら、あなたはもう本当の世界を生きてるんだから。
僕らは花火が終わってもしばらくそこにいた。
そして、帰ろうってパーズが言って、僕らは家に帰った。
明日また、海岸にスパールコールがいることを願いながら僕は眠りに就いた。
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